あだち充の果てしのなさ

 あだち充の作品群を縦断すると、幾人かの定型的なキャラクターを認めることができる。物語の軸となる男の子の主人公。そして二人の女の子。一人はセミロング、もう一人はショートカット。そしてちょっとクールな、主人公のライバルとなる男の子。お決まりかもしれないが、マンネリという言葉を使うのに抵抗がある。あだち充の凄さは限られたキャラクターという枠内で、肌触りがまるで違うストーリーをいく通りも紡ぎ出していけるところにあるからだ。主人公が本質的な憧憬を抱いているのは、セミロングの女の子の場合もあるし、ショートカットの女の子の場合もある。そして主人公を巻き込んだ三角(あるいは四角)関係、物語の肌理、結末、読後の余韻、それらはすべて異なるのだ。ささやかもしれないけれど、実に色彩豊かに。まるで、限られたキャラクターだけで、俺はここまで違った作風の作品を紡ぎ続けていけるんだぞ、とでもいうかのように。また、少しずつキャラクターの造詣をずらしていくことで、物語の幅はより広がっていく。軽やかで鮮やかな職人芸を見ているようだ。
 僕は、まだ読んでいないあだち充の作品を残している。それってかなりの幸せなんじゃないかと思う。